2019年12月19日
第8回は、講師に木下 美香氏を迎え、「ウエルネス・ヘルスケアの未来」というテーマで講義いただきました。
木下 美香氏
株式会社三井物産戦略研究所 技術・イノベーション情報部 新産業・技術室
2004年、名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程修了。同年大手内資製薬企業の医薬研究本部へ入社し、研究に従事。2017年、株式会社三井物産戦略研究所へ入社。
現所属にて、医療ヘルスケアとマテリアル分野における国内外の技術及び市場動向調査・レポート執筆に従事。
ウエルネス・ヘルスケアは、人が充実した人生を歩むためにとても重要な指標であるとともに、国の財政にも大きなインパクトを与えます。こと日本においては、長寿命化により医療財政への影響も大きく、最重要課題の1つとなっています。
現在の日本が置かれている状況と近未来、そこにあるビジネスの種をどのように考えれば良いか。木下講師による、多種多様なエビデンスに基づく近未来予測を伺いました。
木下講師の講義より読み取れる近未来予測は以下のようなものでした。
- 長寿命化により医療財政が増加
・日本の医療費
2015年度:42.3兆円 → 2025年度:52.3兆円(予測)
・世界的に認知症患者が急増し、そのケアコストも急増
2018年の患者数:5,000万人 → 2050年:1億5,200万人(予測)
2018年のケアコスト1兆ドルは、2030年には倍の2兆ドルに - 高齢者の定義が見直される
・体力テストの年次推移はこの10年間で5歳ほど若返っている
・現在の65歳を75歳にした場合の年齢層別人口割合を経済産業省が発表 - 予測される近未来
・「病気(認知症、生活習慣病)にならない」が重視されるようになる
・伝統的医療の枠組みを超えた分野からの医療技術が促進されるようになる
ベンチャーの役割
講義後半では、このような情勢の中で参入が促進されるようになったウエルネス・ヘルスケア分野におけるベンチャーの事例について紹介いただきました。
「自分が医療に対して感じた『ちょっとした不満』や『こうならいいのにな』という気持ちを大切にしてください」と木下講師は仰いました。どれだけ医療が進化したとしても、そこには必ず個々人が抱える不都合があります。医療がスコープしているのは患者の病気や健康に関することであり、それが日々の生活に与える不都合や不満には目が行き届かないことも多くあります。その少しの不満や改善こそが、ベンチャーが社会に貢献できるステージとなります。
このお話しを伺い、事務局である私が感じたのは、「ヘルスケア(健康)を促進するのが医療関連機関の役割であり、それを自己実現まで包含したウエルネスへ昇華させるのがベンチャーの役割なのだ」ということです。
心身が健康であることは充実した人生の必要条件かもしれませんが、そこにQOL(Quality of Life)がなければ「長寿だけど不幸せ」になってしまいかねません。「長寿で幸せ」な人生を歩む人が増える社会にする。これは第1回において小宮山講師より講義を受けたプラチナ社会に通じる考え方であると感じました。
グループワーク
グループワークでは、木下講師の講義を受ける形で、「発展解消型10年間限定、ウエルネス・ヘルスケア事業を提案する」というテーマで行いました。ウエルネス・ヘルスケア分野においてテクノロジー主導の時代は確度の高い未来予測ですが、それが一般の人に浸透するためには時間がかかります。この隙間を埋める事業を考えました。
グループワークを毎週こなしてきた受講生のスピード感やアイデアの質は回を重ねるごとに向上しているのが、手に取るように感じられます。開始当初はグループワークが終わるたびに「地頭を鍛え直さなきゃいけないです」と焦心されながら帰路についていたとある受講生の方が「今日は久しぶりに安らかに眠れそうです!」と仰ったのが大変印象的でした。
次回は、株式会社野村総合研究所の相澤 晶子講師、本校修了生で間もなくRePUBLICを立ち上げる髙橋 智彦講師を迎え、「ICT/AI/IoTのインパクト」をテーマに講座を開催します。
お知らせ
当講座では、ご興味を持たれた方の見学・体験を随時募集しています。
ご希望の方は、下記フォームよりお申し込みください。
- 参加費は無料です。
- 運営の都合上、申込者1名につき1回のみ参加となっております。
- 参加人数によってはグループワークへの参加ができない場合があります。予めご了承ください。
- 学校施設につき入場は18:30以降にお願いします。
- 当日の写真撮影・録音は固くお断りします。