府中市 田代美香さん(特定非営利活動法人エンツリー)
POINT | ①企業での経営分析や組織マネジメント等の業務経験を最大限に活用 ②一人ではしんどい、煩わしくとも組織化が重要 ③地域に根差した活動 |
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府中市では、市民協働を積極的に推進する方針のもと、京王線府中駅南側の再開発と併せて建設された複合機能ビル内に、府中市市民活動センター プラッツ を開設しました。2017年7月のことです。同施設の運営管理は、公益財団法人府中文化振興財団および特定非営利活動法人エンツリーの二つの主体で構成されている府中市市民活動センター運営グループが担当しています。
今回ご紹介する田代美香さんは、府中市市民活動センター運営グループの総括として、立ち上げから参加、事業運営の方針策定、市民向け講座やイベントの企画・実施やフォローアップ、登録団体への情報提供や助成金事業の運用管理など多岐にわたる業務の陣頭指揮を執られています。すなわち、行政と市民を繋ぐ中間的組織のマネジメントのプロフェッショナルです。
田代さんは、NPO法人エンツリーに参画する以前は、9年間大手百貨店に勤務して経営分析や調査・催事企画業務を担当するとともに、ボランティア休職制度を活用して青年海外協力隊にも参加した経験があります。それらの経験を生かしてフェアトレードショップも手掛けていました。その後2004年に川崎市のNPO法人ぐらすかわさきに参加し、各種講座の企画運営、市民活動の支援、コミュニティビジネスの支援と実践など多くの活動を牽引し2017年まで事務局、現在も、同法人の副理事長を務めています。
ぐらすかわさきは2012年、川崎市中原区に コミュニティカフェ「メサ・グランデ」を開設しました。(JR南武線 武蔵新城駅徒歩2分 http://mesa-grande.blogspot.com/)。スペイン語で大きな食卓という意味で、食を通じて、作る人と食べる人がともにその空間を、またその地域を作っていこう、というコンセプトで名付けました。この事業は、2011年度から2年間「神奈川県新しい公共の場づくりのためのモデル事業」として川崎市・川崎商工会議所と3者で組んだ協議会で立上げ、2013年度からは、同法人が単独で施設を運営、一貫して「食とコミュニティづくり」をテーマとしています。
当初は経営的に厳しい状況でしたが、田代さんは「日頃コミュニティビジネス支援に関わる者としても、メサ・グランデが自走できるまでは、川崎で走り続ける」との強い決意のもと、仲間とともに、日夜、地域のニーズと施設の運営方法を検証し改善し続け、2017年度には軌道に乗ってきたことから、若手スタッフに委ねました。
現在、メサ・グランデは、カフェ営業に加え、かわさきの地元野菜を販売する八百屋スペース、土日祝日は大きなキッチンを活かしたレンタルキッチン&スペースを提供しています また、障がいのある人の日中の居場所である「地域活動支援センター」としての役割も担っています。筆者の訪問時は平日の14:30でしたが、障がい者のグループと他のグループで10名程が会話を楽しんでいました。
田代さんは、川崎市や府中市等で着実に成果をあげ、人との繋がりが広くまた地域の関係者からの信頼も厚い方です。そんな田代さんに、事業遂行の要諦を尋ねたところ、「ぐらすかわさきに参加した当時、市民活動の世界とビジネスの世界の感覚の違いに違和感を持ちながらも、その違いを調整することが楽しかった。個人事業としてフェアトレードショップを運営したことで、事業遂行の覚悟や決断力が身に着いた。生活している地域で事業を行うことにより、地域の人たちとの結びつきが急速に強くなった。」一方で、「たった一人でフェアトレードの個人事業を始めた頃は、しんどかった。その後、NPOに所属し、団体として事業を行うことができるようになってからは合意形成は大変だが、皆と一緒に、組織的に活動を行うことでやりたいことができるようになった。」とのことでした。
これからの活動については、まず、府中市市民活動センターの運営の基礎固めをすること、次にご自身のテーマである「食」に関連して、地域での食品ロスの軽減や、食と空き家活用の掛け合わせを通じた事業の開発などに取り組んでいく方針です。
3人のお子さんの内、双子のお嬢さん達は海外留学中、ご自身の海外経験もあり、グローカルな観点からの川崎・府中に根差したビジネスへの提案もあるかもしれません。今後も田代さんの活動には目が離せません。